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ワインの現物支給制度

      2016/12/02

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今回は少し重く、真面目なお話です。今世紀に入り、南アフリカ産のワインは、「安くて美味しい」と世界から注目される産地となりました。実際に消費量も右肩上がりです。

 

「安くて美味しい」は魅力的な言葉ではありますが、ちょっと待って下さい。安いものにはそれなりの理由があります。大量生産しているからか、大幅なコストカットができているからか、様々な理由があるのですが、その中で念頭に置いて頂きたいのが、劣悪な労働下で少年少女が肉体労働を課せられていないかです。コスト面で人件費が最も高い国、日本では考えられない事ですが、南アフリカでは高価な機械を使わず、安い労働者を使った方が低コストで済みます。おまけに、手摘み収穫の場合、ぶどうは傷付かず高い品質を保てます。

 

ご存じだとは思いますが、南アフリカでは1990年頃まで人種差別政策(アパルトヘイト)が行なわれていました。人口の10%余りの白人が有色人種を支配し、搾取していた時代です。ワイン業界でも、非白色人種の給料の一部を、現物支給制度(ドップ システム)で支払うというシステムが広く普及されていました。畑での重労働、収穫時期の作業は人手を必要とし、大変なものとなります。彼らの日給は現在でも1400円前後です。その報酬がワイン。酷い話です。転売能力のない彼らはワインを自分達で飲むしか術がなく、次第にアルコール中毒患者へとなっていきました。白人オーナー達がこれではマズイと気が付きました。今日ではワインの現物支給制度は非合法となり、なくなったそうなのですが、一部ではまだ残っているとも言われています。

 

ワインに限らず、ガーナのチョコレート、アラブのピスタチオやデーツ、インドネシアのエビ等、「安くて美味しい」ものを楽しんでいる時、このボトルの向こう側で働く人のことを、少しだけ頭の片隅に入れて置いて頂けたらと思います。

 

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